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ヤタガラスの評価

QED ~ventus~ 熊野の残照高田崇史さんの新作「QED ~ventus~ 熊野の残照」。タイトルにもあるとおり、今度の舞台は紀伊・熊野三山。今までの中でも一番ミステリー色が薄くて(ストーリー的にはやるせない読後感は残るものの)、むしろ歴史の謎解き本として楽しむべきなのかなと思う。そしてこの中で、かなり重要なキーワードになっているのが、「八咫烏(ヤタガラス)」。

「ヤタガラス」。日本サッカー協会のシンボルにもなっている伝説上の三つ足の烏(JFAオフィシャルページによると、このシンボルマークのモデルは、中国古典の三足烏でもありヤタガラスでもあるらしい。ニュアンスからして両者は同一の烏というわけではないよう…。)。
このヤタガラスを、なぜサッカー協会がシンボルにしているのか…。実は知らなかったのだけど、「日本近代サッカーを紹介した中村覚之助氏の出身がヤタガラスを祀る神社のある那智であったこと」、そしてこのヤタガラスが「記紀によれば、神武東征の際、神に遣わされて神武軍を道案内し大和の平定に寄与したため、勝利のシンボルとされたこと」、に由来しているらしい。

神武東征とヤタガラスの関係、もちろんここでされているのは、「表の歴史」的説明であって、高田さんの解釈はまったく反対になる。
つまり、ヤタガラスの裏切りによって、熊野を治めていた神・長髄彦(ながすねひこ)が神武軍に敗れたのだと。故に烏は嘘の象徴であると。

歴史はそういうもので、勝者と敗者では見方が180度違う。そして大概敗者の歴史は、勝者によって握りつぶされる。つまり今現在「正史」と呼ばれるのは、勝者の歴史。文献などとして残るのも大抵はそう。勝者にとって都合の悪い史実が形となって残されることはないから。
ただ一方で勝者は敗者の「祟り」を恐れるがため、御霊などとして丁重に祀る。それが結果として「敗者の歴史」を明らかにしていたりもする。
私は学生の頃からその「敗者の歴史」「陰の歴史」の方により興味を惹かれてきていたので、この高田さんの作品も好みにあうのだと思う。
今回の作品からも、神話時代からの悲しい歴史と熊野三山の関係が、桑原崇によってみごとに浮かび上がらされていって面白かった。
でも最後になってやっといつもの面子が揃うこの展開って、もしかして熊野あたりを舞台に、もう1つ作品が続くってことなのかな?

しかし…。ヤタガラスの印象が悪くなってしまったのは、私としてはちょっと困ったな(苦笑) 代表ユニを見るたびにこの話を思い出してしまいそう…。

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